「大人の手順−逢えない時間こそが快楽−」岸田陶子の翻弄
陶子の事を思うと、胸が痛む。あの彫塑のような小さな顔と、縁どる柔らかい髪。細い首からなだらかな肩を想像したあたりでもう脩二には我慢がならなくなった。ジッパーを下して中身を取り出す。鳴らない電話。陶子にとって旬介は、使い古された手帳以下なのか、それとも取るに足らない片方だけのピアスなのか、と悲観的な気持ちになりつつも、陶子のやわらかい肌を思うと堪らなくなって自分を扱いた。もう2週間も連絡がない。陶子は旬介の母親の従兄弟である年上の実業家と結婚している女性だった。小さなエステティックサロンを経営している。代々木八幡のそこはなかなかの隠れ家として口コミで有名だった。
母親に連れて行かれたなにかのコンサートで出会い、その後プレゼントを選ぶのを手伝えとかエスコートしろとか、そういう子供扱いの付き合いが続き、そういう扱いをされたことのない脩二は戸惑い、急速に惹かれていった。最初に寝室に通された時、脩二はまるでそうするのが礼儀かのように、ゆっくりと陶子をベッドに押し倒したが、身体を翻された時は「間違った!」と思った。しかし彼女は脩二をゆっくりと裸に剥くと、ひっくり返してエステを始めたのだ。要するに、その日はそれで終わってしまったのだ。股間は爆発寸前だった。やっと裸を抱きしめることを許してもらえたのは、7回逢った後だった。激しく突く事を許してもらえたのは10回目。フェラチオしてもらったのは14回目だった。
これが大人の手順なのだということを脩二はあとから知った。脩二の知っている女といえば、初対面とか夜遊び終わりで簡単に寝るような女だった。4時間後、上機嫌でシャワーを浴びた脩二は、陶子の待つベッドに滑り込んだ。今日はどんなだろう。と想像するとさっきの自慰がもったいなく感じた。待っていればよかった。腕の中でしなやかに形をかえ、するりと逃げあるいは絡まり、甘い声だけで脩二の勃起を誘う。熱い内側だけが陶子の情熱を伝える。肌はまさに陶器で常に冷たいのだ。恋に堕ちるということを、脩二は陶子に教わった。逢わない時間こそが甘美で完璧なエクスタシーなのだということを、毎回逢うたびに思い知らされる。
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